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樹海の隠し小屋

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SNSの自己紹介にも"好きなスポーツがピアノ"と書きましたが、ピアノはスポーツ以外の何物でもありません。それを証明する代表曲の1つ、ベートーヴェンの"ハンマークラヴィーアソナタ"のCDを買うことを決意しました。全曲を弾き切るのに数十分を超えるピアノソロ、そこに要求される技術と構成力、そして精神力は並外れています。

というわけで、ベートーヴェンのソナタを買いました。"ハンマークラヴィーアソナタ"をはじめ、17番と、21~32番が揃いました。古典派からロマン派に向けての変化を感じられるラインナップです。全て通して聴くと3時間を超えますが、最近では26~32番の7曲に縮小しています。やはりショパン好きにはロマン派に近い時代の作品が合うようです。

ソナタや協奏曲などには楽章という、それだけを聴いても1つの曲として成立する部分があり、ベートーヴェンのピアノソナタでは2つから4つの楽章をひとまとめにして1曲となっています。たとえば、ある小説が上中下巻に分かれているとして、小説を1曲に読み替えていただければ結構です。

私はこういったものを聴くとき、ある特定の楽章(大抵は終楽章)が好みでその楽章のみを聴きたくなったときでも、必ず一度は1楽章から終楽章まで通しで聴いてから、特定の楽章を繰り返すというルールを作っています。

特に3楽章以上で構成される曲では、どの曲も最後の楽章に一番の盛り上がりを見せます。私もこの盛り上がりを聴きたいがために、終楽章から再生したくなることがありますが、楽章というものはあくまで曲の一部を切り取ったものです。特に、ベートーヴェンのピアノソナタは前の楽章と次の楽章の間に休みを置かない曲が多く、特別な理由なしにそういったシークエンスをむやみに切り取るのは良くないと考えています。

多くの曲は、複数の楽章に分かれていません。しかし、楽章で分けるということは、1曲として演奏するにはあまりにも冗長すぎるため、適度なところでそれまでのドラマを区切って展開させることが目的です。ですから、わかりやすく言えば、終楽章から聴くということは、ハリー・ポッターの7巻からいきなり読み始めることと同じです。確かに、7巻が面白いから何度も読むということがあっても、その前には必ず1巻から通して読むはずです。そうでなければ、ドラマを理解することができませんからね。

具体的に、3楽章からなるピアノソナタ26番"告別"には、ベートーヴェン自らが楽章ごとに、"告別"・"不在"・"再会"という副題をつけています。私はこの3楽章がとても好きですが、だからと言ってこれだけを聴くということには意味がありません。必ず前のドラマから通して、その後にリピートしています。殊にこの3楽章は"再"なんですから、"一度出逢っていたのに別れてしまった"という前置きがなければどう考えても不自然ですね。

(特に男性の方はよくおわかりでしょうが、)クライマックスだけを楽しみたいというのは人間の本能だと思います。人によっては、特定の楽章だけ単発で聴きまくるというスタイルの人もいますが、それはそれで構わないと思います。しかし、前置きに時間をかけるほど、クライマックスでの感動が大きくなるものだと思います。
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